ESXI7.0をRyzen7 5700Gで構築
この記事で実現すること
最近、改めて無償版ESXi7.0向けのハードウェアをRyzen CPUをベースにセットアップし直したので参考までに掲載します。vmの動作などは全く問題ありませんが、ESXi自身のセキュアブートだけはうまくいきませんでした。参考になればと思い記録を残します。
ご注意事項
2024/1/22に発表されたVMWareブログによりますと、スタンドアロン製品の提供を終了し、サブスクリプションモデルに変更されることとなりました。この無償版ESXiは今後提供停止となりますが、サポートは継続されるとの事です。
無償版ESXiの利用にあたっては、まずこちらの記事「VMWare 無償版ESXiの提供終了について」を参照されることをお勧めします。
ESXi7のためのハードウェア選定検討
ハードウェア選定については以下のポリシーとしました。私はパワーユーザーではなく、1つの仮想マシン(vm)に大きな能力を求めていませんが、LinuxやFirewallなどを中心にvmの数だけは増えていきそうな気がします。これまで使っていたハードウェアは10GBase-TのNICも含めてかなり熱を出していたのでもう少し省電力を求めて探しました。
- CPUは多くのvmを動かすことが想定されるが省電力を意識したい
- 筐体はスリムタイプ(Micro-ATX)でグラフィックカードは積まず貴重なPCIeスロットはネットワークカードに使う
- ネットワークカードはintelかMellanoxが候補。熱対策が必要なので10Gbase-Tではなく、SFP+を中心に検討
- ストレージは高速化のためNVMeにしたい
ハードウェア構成
以下のハードウェア構成となりました。
パーツ | 製品名 |
---|---|
CPU | Ryzen7 5700G 3.8GHz(Radeon Graphics) |
マザーボード | GIGABYTE B550M S2H Micro-ATX |
メモリ | SanMax DDR4-3200 1.2Volt Skhynix(88H) 32GB x 2 |
NVMe | Samsung 970EVO Plus PCIE x Gen3 x 4 1TB |
SSD | WesternDigital Blue 500GB |
NIC | ipolex OEM (intel X710 chipset) 10GbE SFP+ 4Port |
電源 | スリムタイプ 300W電源 |
キーボード・マウス・NICを除き163,480円でした。NICはダイレクトアタッチケーブル2本を含め$531でした(送料と関税入れると$580程度)。
CPU
毎回の説明ですが、ESXiにおいてはリテール向けのCPUは公式にサポートされていません。intelのCore iシリーズは鉄板ですが、AMD Ryzenでも動くようだという記事もちらほら見かけるようになりました。ESXi7.0になって、AMDのZEN3アーキテクチャをサポートするという内容(具体的にはEPYCに対応する)についてVMWareの方が説明しているビデオを見た事があり、ZEN3アーキテクチャのRyzenなら安定動作が見込めるのではないかと考えました。 私の場合省電力のPCを必要としていました。省電力ながらCPU8コア16スレッドは魅力です。Ryzen7 5700GはTDP65Wなので、全体で100W程度の省電力マシンを構築することを目標としました。ヘッドレスシステム、いわゆるキーボードもマウスもディスプレイ(グラフィックカード)も持たないESXiでのGPUレスのセットアップもあるようですが、トラブル時の緊急対応や後々のクライアントPCとしての再利用も視野に入れ、GPU付きのCPU(APU)を選択しました。
マザーボード
秋葉原のパソコンSHOPアーク(Ark)にカスタマイズモデルがあり、それをベースに選択しました。無線LANや2.5GbEなども使う必要がないのでシンプルなマザーボードのGIGABYTE B550M S2H Micro-ATXを選定しました。
メモリ
安定していると評判の国内メーカーのものを選定しました。
ストレージ
VMware Commmunityで970EVO Plusが動作するという情報が数件あったのでそれを参考に選定しました。980 Proなどそれ以上の魅力的な製品もありますが、Ryzen7 5700Gを選定しているため、PCIe x 3の制約があり、その上限に合わせた製品にしました。
ネットワークカード
それなりの数のvmを動作させるとなると必然的にNICは10Gbpsを用意したくなります。過去からintel X550-T2を使ってきてそのまま使い続けるのでも良かったのですが、私の場合、クローゼットに光回線とモデム、CD管が集約されてしまっていることから、そこにあまり熱の出すハードウェアを置けません。次回はSFP/SFP+にしようと決めていました。が、NICについては昨今の半導体不足で、欲しいカードは殆ど品切れの状態です。それでAmazon.comでipolexというSFPメーカーがOEM提供しているintel X710のチップが乗った4Portの10GbEカードを購入しました。intel純正のX710のSFP+4Portはフルハイトのカードですが、このipolex社のNICはロープロファイルでしたので私にとっては都合が良いものでした。
なお、2023-2-8時点でamazon.comでもintel純正のSFP+モデルは完売、X710チップが乗った2Portの3rdベンダー製品で$270です。
ESXi7.0u3cのインストール
UEFIの設定
UEFIについては、以下の項目を設定しました。
項目名 | 設定値 |
---|---|
SVM mode | Enable |
Fast Boot | Disable |
CSM Support | Disable |
Secure Boot | Advanced |
しかし、最終的にはセキュアブートでインストールされませんでした。
VMware Communityでも見かける内容ですが明確な答えは無いようです。これはマザーボードとESXiとの相性と考えられますが、今後もウォッチしていきたいと思います。
https://communities.vmware.com/t5/ESXi-Discussions/Enabling-Secure-Boot-not-possible/m-p/2864968
(2023-7-6更新)
事後にある手順を経てESXi8.0でセキュアブートでセットアップすることができました。セキュアブートの手順はこちらの記事「ESXi8.0をRyzen5 5600Gで構築」を参照してください。
インストール
これまで同様、Rufusで32GBのUSBメモリにISOファイルを登録しUSBブートからセットアップしています。64Gbyteのメモリを認識し、NICも4つ認識されました。
NICの情報はこちらです。
ipolexはさらに製造をアウトソースしているのでしょうか、単に販売代理店でしょうか。MACアドレスを見る限りでは、「Beijing Sinead Technology」が製造しているようです。購入にあたってはipolexのサポートの方と色々やりとりができましたので安心して購入できました。
ストレージコントローラは以下の通りです。NVMe 1GBに加え、バックアップ用途で500GBのSSDを加えています。
旧マシンからvmの移行
環境が異なるため、vSwitchやポートグループの設定はやり直しになりました。NASに対するNFSのマウントなど、いくつかの作業はありますが、そう重い作業ではありません。旧マシンでghettoVCBのバックアップから新環境にレストア、こちらも特段問題がなく3つのvmはあっさり30分程度で終了です。セキュアブートにしていたubuntuやWin10などは問題なく起動しています。
ストレージのパフォーマンス
vmのWindows10で実行したCrystal Disk Markの結果です。
ネットワークのパフォーマンス
こちらはWindows10Proのvmから10GbEのNASに対するiperf3の結果です。シングルスレッドだと7Gbps程度が限界のようです。元々、Windows版のiperf3はUNIXからの移植のためのヘルパー機能であるランタイムライブラリ「Cygwin1.dll」を使っておりパフォーマンスが出づらい状況にあります。さらに対向する端末の能力が高くないとこのような結果になりやすいです。10並列でようやく期待値となりました。
- シングルスレッド
1 | C:\Users>iperf3 -c 192.168.x.x |
- 10スレッド
1 | C:\Users>iperf3 -c 192.168.x.x -P10 |
ubuntu20は問題なしです。
1 |
|
速度としては問題ありませんが、ubuntu側にRetrの数字が出ており、対向側端末の能力不足で送信側のTCPの再送が稀に入っています。
電力チェック
簡単な負荷テストを実施してみました。このESXi上にある仮想マシン2つを使ったテストです。ubuntu(2vCPU)からfast.comへの速度テストとSophos Firewall(4vCPU)でIPSによるSSL/TLSインスペクションの負荷試験です。回線契約はauひかりの5Gbpsですが、FirewallのSSL/TLSインスペクションが入るのでスループットは落ちます。CPUリソースおよび電力の記録は以下の通りです。
CPU使用率は綺麗に分散していますしまだ半分ほど余力があります。Sophos FirewallのIPSは4つのスレッドで動作すると聞いていたことがあったので、1つのスレッド(vCPU)に偏るか最大4つのスレッドに偏るかと思いましたが、良い意味で予想は外れました。電力については、何もしていない時で35W、速度テスト実施中でも100Wに到達しない程度です。
ちなみに、数分速度テストを実施した後のダイレクトアタッチケーブルのSFP+モジュール部分は冷たく感じる程度で全く熱を持っていませんでした。
SFP+について
今回、SFP+の4PortのNICを選択しましたが、インターネット接続側のホームゲートウェイ(HGW)は従来のRJ-45の端子であることが殆どです。この場合は以下の選択肢があります。
- 拡張性のあるマザーボードを選定し、2つのPCIeスロットに2枚のネットワークカードを挿す(1つはRJ45、1つはSFP+)
- RJ45ポートとSFP+ポートを持つスイッチングハブを経由し、ESXiからスイッチにはSFP+で接続、スイッチからHGWにはRJ45で接続する。この場合はスイッチにおけるLAN側、WAN側とをVLANでネットワークセグメントを分離する必要があります(私はこの方法を選択)。
- SFP+からRJ45への変換専用の小さなスイッチを用意する(CRS305-1G-4S+IN)。但し、この場合もRJ45変換のSFP+トランシーバーは必要です。
お勧めしないのは、NICのSFP+ポートにRJ45変換のための10Gトランシーバーを接続することです。10GのRJ45トランシーバーは最大3W程度の消費電力ではありますが、触れなくなるほど高熱(70℃)になり、NICに接続するのはNIC破損の危険が高いです。またPCIからSFP+ポートへの電力供給不足でリンクアップしなかったり、2.5Gでリンクアップする場合があります。
スイッチに10Gトランシーバーを接続する場合、ネットワーク機器を販売しているMikroTikでは以下のガイダンスを提示しています。
MikroTik S+RJ10 general guidance
前述の通り、S+RJ10(10Gbps RJ45トランシーバー)は通常のトランシーバーよりも発熱が大きく、特にリニアSFPケージを4つ持つデバイスでは、並べて置くとオーバーヒートにつながる可能性があります。S+RJ10は2個おきに配置し、その間に光トランシーバーか空きポートを確保することをお勧めします。
https://wiki.mikrotik.com/wiki/S%2BRJ10_general_guidance
MikroTikのS+RJ10は高発熱で有名なモジュールですが、他の10GBase-T SFP+モジュールも相当な温度になります。トランシーバーの作りに問題があるわけではなく、そもそも10GBase-T(RJ-45)はかなりの発熱になってしまい、スイッチングハブであっても内部は相当な熱を持ちます。
SFP+の詳細な情報については「 10GネットワークとSFP+ 」にまとめてあります。
Mellanoxの現行モデルはやはり在庫を殆ど見かけない状況ですが、Nvidia(Mellanox)のサイトではESXi7.0/8.0のドライバはConnect X-4以上を対象にしています。
Mellanox End of Life Notification Procedure
https://network.nvidia.com/related-docs/eol/LCR-000532.pdf
intel X710の注意点について
X710は省電力で安定した動作をしますが、過去に何度もファームウェアの脆弱性が指摘されています。今の半導体不足の外部環境下において、もはやintel純正を購入することは困難ですが、サードパーティ製のNICでX710のチップが乗ったものを購入する場合であっても、ファームウェアの更新が必要になってきます。ESXiにおけるネットワークカードのファームウェアの更新方法も整理していますので、以下の記事を参照してください。